「海外で働いてみたい」「国際的な獣医療の現場を経験したい」──そう思ったことはありませんか?
近年、獣医学生や若手獣医師の間でも「海外キャリア」に関心を持つ人が増えてきました。でも実際には、どんな資格が必要なのか、どこで免許が使えるのか、語学や費用のハードルは?など、調べるだけでも一苦労です。
この記事では、そんな疑問を持つあなたのために「まずはこれだけ押さえておきたい!」という情報をギュッとひとまとめにしました。 NAVLEやECFVGといった試験制度から、語学、留学費用、研修先、さらには非臨床キャリアや実際に海外へ出た人の体験談までをざっくりカバーしています。
この記事は、“海外で獣医師になるには?”というテーマの全体像をざっくりとつかむためのスターターガイドです。制度の詳細や試験の受け方、実際の準備プロセスについては、今後の連載記事でじっくり深掘りしていく予定です。気になったテーマがあれば、ぜひ次の記事もチェックしてみてくださいね。
日本の獣医師免許は海外で使えない

日本の獣医師免許は原則として、海外ではそのまま使用できません。
各国には独自の国家資格制度があり、働くためには基本的にその国の試験や認定制度をクリアする必要があります。(参考:文部科学省)。
とはいえ日本の獣医教育の水準は国際的にも高く、EAEVE(欧州獣医教育認証)やRCVS(英国王立獣医師会)など、国際的な認定を受けている大学もいくつか存在しています。これらの大学を卒業することで、一部の国では手続きがスムーズになるケースもあります(例:鹿児島大学の英国国家試験免除など)。
また、今後はWOAH(旧OIE)が主導する獣医学教育の国際基準化により、将来的にライセンス相互承認のような制度が生まれる可能性もあります(参考:文部科学省資料 PDF)。
各国で必要な試験・資格制度の違いは?
ここで気になってくるのが、国や地域によって獣医師になるために求められる試験や認証プロセスが「どのように異なっているのか」ということではないでしょうか。
以下は簡易的な一覧ですが、さらに詳しく知りたい方は 主要国の制度・語学・認定機関まで網羅した特集記事 もぜひご覧ください👇
国・地域 | 必要な試験 |
---|---|
アメリカ (州ごとに違いあり) | NAVLE |
カナダ | NAVLE |
オーストラリア | AVE |
ニュージーランド | AVE |
EU | 必要に応じて(国による) |
イギリス | 必要に応じRCVS法定試験 |
タイ | 国家試験 |
日本 | 国家試験 |
韓国 | 国家試験 |
中国 | 国家試験 |
台湾 | 国家試験 |
南アフリカ | SAVC登録試験 |
各国の制度は流動的な部分もあるため、最新情報は必ず各国の公的機関サイトで確認してください。
NAVLEとは?

NAVLE(North American Veterinary Licensing Examination)は、アメリカおよびカナダで獣医師として働くために必要となる試験です。
試験の基本情報
- 年2回実施(春・秋)
- コンピュータベースの選択式問題(360問)
- 試験時間:約7.5時間(複数のセクションに分かれる)
- 合格ラインはおよそ70%前後(変動あり)
受験資格
- AVMA(米国獣医師会)が認定した獣医大学の在学生または卒業生
- もしくはECFVGやPAVEといった外国獣医師向けの認証プログラムを修了していること
試験の目的
NAVLEは臨床能力を広く評価する試験であり、犬猫だけでなく、ウシ・ウマ・ブタ・家禽などの多様な動物種に関する知識が問われます。主に診断、治療、予防、福祉、倫理などの観点から出題されます。
公式情報
NAVLEの詳細な出題内容や勉強法、使用教材については、別記事で詳しく紹介する予定ですのでお待ちください!
留学・進路にかかる費用と期間は?

海外で獣医師として働くためには、語学試験の受験費用、資格認証の登録料、渡航や現地生活のコストなど、ある程度の費用が必要になります。たとえば、TOEFLやIELTSといった語学試験は2〜5万円程度、NAVLEを受験するためのECFVGやPAVEへの登録には数十万円がかかります。
実際の留学にかかる費用としては、学費(特に私立大学では年間数百万円規模)、渡航費、滞在費を合わせて年間400万円以上を想定しておくと安心です。
また、認証試験のみであれば1〜2年程度で完了する場合もありますが、海外の大学に編入・再入学する場合は4〜7年かかるケースもあります。
金銭的な支援制度としては、以下のような奨学金があります
より詳細な費用内訳や体験談を交えた「資金計画」の記事も、今後別途公開予定ですのでお楽しみに!
海外で活躍するならば語学力は必須!

海外で獣医師として働くには、単なる日常会話ではなく、獣医学の専門用語を含んだ高度な英語力が求められます。特にNAVLEやECFVG、PAVEといった試験を受験する際には、公式に定められたスコア基準をクリアする必要があります。
たとえば、ECFVGではTOEFL iBTで合計92点(Listening 25、Writing 22、Speaking 22、Reading 23)、PAVEではIELTSでOverall 6.5(Listening 6.5、Speaking 7など)のスコアが必要です。これらの基準は「読み書き」だけでなく、「聞く・話す」力もバランスよく求められることを意味します。
勉強方法としては、NAVLE対策に特化した教材である「Zuku Review」が有名です。獣医学の基礎知識や出題傾向に合わせた問題が揃っており、海外の多くの学生も利用しています。有料プランのほかに、毎日1問ずつ英語で届く無料メール配信もあります。
近年では、ChatGPTを使った英語学習も注目されています。英語で日記を書いて添削してもらったり、自分の文章を「文法的に正しいバージョン」「ネイティブっぽい自然な表現」の2パターンで修正してもらう方法などがあります。
そのほか、大学の語学センターや外部スクールのTOEFL/IELTS対策講座を利用する方法も定番です。
模試やカウンセリングを受けられるところもあるので、早めの活用がおすすめですよ。
なお、TOEFLやIELTSの勉強法、Zuku Reviewの活用方法、ChatGPTでの英語学習ステップなどについては、別記事でより詳しく解説予定です。具体的な学習計画を立てたい方は、そちらもぜひチェックしてください!
若手でも挑戦できる!海外研修・実習のリアル

「留学=高学年から」と思われがちですが、実は1〜3年生のうちから参加できる海外プログラムも存在します。
語学や国際交流に自信がなくても、興味さえあれば挑戦できるチャンスが広がっています。
代表的な選択肢:
- IVSA(国際獣医学生協会):JAVS経由で加入可能。野生動物シンポジウム、短期留学、オンライン交流など多様なプログラムを展開。
- 大学主催の国際交流:酪農学園大学、北海道大学、帯広畜産大学などは、カナダやタイ、アメリカなどとの協定校留学を実施。実習先での単位互換が可能な場合もあり。
- 民間団体や国際ボランティア:Mission Rabies(狂犬病予防活動)、WVS(途上国での手術支援)、WFFT(タイの野生動物リハビリ)など、低学年でも参加可能な実習・交流型プログラムあり。
「まだ何がしたいかわからない」という段階でも、海外で現地の獣医学や文化に触れることで、将来の進路を考えるきっかけになります。
獣医師=臨床だけじゃない!非臨床キャリアの選択肢
海外では、「動物病院で診療する」以外にも多彩なキャリアパスが存在します。研究、製薬、国際機関、農業支援など、多くの場面で獣医師の知識と視点が必要とされています。
分野 | 活躍の場 | 補足情報 |
---|---|---|
研究職 | 大学・研究機関、OIE協力研究センターなど | 博士号が求められるケースが多い |
製薬・動物薬企業 | 臨床試験、安全性管理、MSL(学術担当)など | MSD、Zoetis、Elancoなどで活躍のチャンス |
国際機関 | WHO、FAO、OIE、JICA など | 感染症対策や公衆衛生政策への貢献 |
農場支援・畜産ICT | 飼料会社、農業開発企業、国際支援団体など | ニュージーランドや東南アジア諸国でニーズ高 |
これらの仕事では「獣医師免許」が絶対ではなく、「修士・博士課程での専門性」「語学力」「研究実績」が重要になる場合もあります。現場の臨床とは違った形で「動物と人の健康を守る」仕事に関心がある人には、非常に魅力的な進路です。
世界で異なる!獣医療文化・価値観のちがい

海外での獣医療のあり方は、その国の文化・宗教・経済状況によって大きく左右されます。
日本と比べると、驚くような価値観の違いも少なくありません。
たとえばヨーロッパでは、動物は「感情を持つ存在(sentient beings)」として法律で保護されており、安楽死や動物福祉に対して厳格な基準が設けられています。一方、アメリカでは医療の商業化が進んでおり、診療費が高額である代わりに、専門医制度や設備は非常に発展しています。
イスラム圏では、宗教的な配慮により豚由来成分の使用や犬との接触に慎重になる場面もあります。また、南アジア(インドなど)では、牛を神聖視するため解剖や安楽死がタブーとされる場合もあります。
中国では伝統医学の影響から漢方や鍼灸を取り入れた治療が一般的に行われる地域もありますし、アフリカの一部地域では、動物が財産や通貨とされる文化の中で、公衆衛生対策としての獣医療の役割が強調されます。
こうした価値観は、現地で働く際や留学先を選ぶ際に大きな影響を及ぼします。獣医師としての技術だけでなく、文化的な理解力・共感力も求められるのが国際獣医療の世界です。
今後は、地域別の医療文化や現地での働き方に関する記事も展開していきます。
参考リンク:
海外を目指す獣医学生たちのリアルな体験談

「本当に行ってよかった」「思ったより苦労が多かった」など、海外を目指す獣医学生・若手獣医師の体験談はとても参考になります。
たとえば、ウガンダの野生動物保護区を訪れた学生は、獣医療の重要性と同時に“現場での柔軟性”の大切さを実感したそうです。また、JICAの活動でアフリカに渡った人は、現地スタッフや家畜オーナーとのコミュニケーションに苦労しつつも「獣医師として社会に貢献している実感」を得たと語ります。
さらに、ニュージーランドでワーキングホリデーからそのまま獣医師として働くようになった方は、「最初は免許の書き換えに苦労したが、現地の温かさと自由な雰囲気が性に合っていた」とのこと。
こうした生の声は、机上の情報だけではわからない“感情の起伏”や“国境を越えて働く意義”を教えてくれます。
参考リンク:
今後は、こうした留学・就職体験談を連載形式で紹介予定です。
「自分にもできるかも」と思えるヒントがきっと見つかるはずですので、楽しみにしておいてくださいね。
可能性は“日本の外”にも広がっている
今回ご紹介した内容は、海外で獣医師として活躍するために必要な知識や準備の“入り口”となる情報をまとめたものです。制度や試験、語学、実習、そして体験談まで幅広く取り上げましたが、あくまで全体像をざっくりと把握するためのガイドラインという位置づけです。詳細な手続きや受験方法、大学ごとの比較、国別の最新情報などは今後の連載記事で順次取り上げていく予定です。
これを出発点として、「自分はどう動けるか」を考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
今後も、試験対策や語学学習法、海外大学の比較、非臨床キャリアの深掘りなど、テーマ別に掘り下げた記事を発信していきます!
世界は広く、多様なキャリアがあなたを待っています。この記事が、その一歩を踏み出すヒントになれば幸いです。
次回予告:「日本の獣医師免許はどこで使える?」国別制度まとめでよくある疑問に答えます
今回の記事では、北米で獣医師として働くための制度や試験について紹介しました。次回は、日本の獣医師免許が海外でどこまで通用するのか、国ごとの制度や対応について詳しく解説していきます。
「オーストラリアでは使えるの?」「英語圏で働きたいけど、日本の免許は有効?」といったよくある疑問に答える内容となっています。ぜひあわせてご覧ください!
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