「あのときは、“まあ何とかなるだろう”と思っていました。」そう振り返るのは、獣医師国家試験に3度挑戦し、現在は見事に合格を果たしたYYさんです。
この記事では、合格までの道のりのうち、2度の不合格を経験した時期に焦点を当てます。
現役時は班活動に追われて勉強時間が足りず、一浪時は「もう人に振り回されたくない」と一人で勉強に取り組みました。しかし、その選択が思わぬ形で孤独や慢心を生み、結果的に再び不合格に。
「辞めようとは思わなかった。やめた不安のほうが大きかった」と語るYYさん。
不合格という現実の中で、何を感じ、何に気づき、どのように次へ向かっていったのか――。
本記事では、“不合格の2年間”を振り返りながら、YYさんが見つけた本当に大切なことをお届けします。
受験当時の状況
現役時代の勉強スタイル
――まずは、現役時代の勉強状況について教えてください。
YYさん:
現役のときは、期末試験に向けて勉強する程度で、復習はほとんどしていませんでした。本格的に国試の勉強を始めたのは、卒論発表が終わった12月の頭ごろです。
ただ、班活動のスライド作成や発表準備に時間を取られてしまい、国試対策にはあまり集中できませんでした。当時は、「班活動で教える=勉強になる」と思っていたんです。
でも実際は、他人に説明するための準備ばかりで、自分の理解を深める時間が不足していました。その結果、臨床系などの苦手分野に手が回らず、勉強のバランスが崩れてしまっていたと思います。
一浪時の生活と勉強ペース
――一浪時はどのように勉強していたのでしょうか?
YYさん:
一浪のときは、10月半ばから本格的に勉強を始めました。それまでは現役時代の国試資料を軽く見返す程度で、1日1時間ほどの学習しかしていませんでした。勉強を再開してからは、午前中は自宅で、午後は大学で勉強するリズムをつくっていました。
ただ、どこか気が緩んでいて「これくらいで大丈夫だろう」と思っていた部分もありましたね。夜はランニングを日課にしていて、今振り返ると勉強よりも運動のほうが中心の生活になっていました。
勉強の習慣は身についてきたものの、「受かるために必要な量」に届いていなかったと感じます。全科目に触れるようにはしていましたが、深く掘り下げる時間が取れなかったです。
勉強法と使用教材
使用していた教材
――国試対策で使用していた教材を教えてください。
YYさん:
主に使っていたのは、「日獣まとめ」と「麻布カラーアトラス」です。どちらも重要ポイントがコンパクトにまとまっていて、基礎を確認するのに役立ちました。それに加えて、有志が作成したスライドや授業スライドも活用していました。
過去問は平均で5年分ほどを繰り返していましたが、分野によって差がありました。得意なところは10年分やっていても、苦手なところは3年分程度しか手をつけられず、その“偏り”が最終的な得点の伸び悩みにつながったと思います。
模試の受け方と復習方法
――模試はどのように活用していましたか?
YYさん:
現役のときは、模試の前日まで普通に勉強していて、特別な準備をしないまま受けていました。復習は一応していましたが、問題数が多すぎて途中で嫌になってしまうこともありました。
一浪のときは、教室で受けずに問題だけもらって図書館で解いていました。時間を区切りながら自分のペースで取り組めたので、復習の時間は確保しやすかったです。
ただ、模試を通じて“本番を想定した緊張感”を経験する機会が少なかったのは反省点でした。
得意科目と苦手科目への対策
――得意分野・苦手分野はどのようなものでしたか?
YYさん:
得意科目は伝染病や公衆衛生などの感染症系でした。暗記が得意だったこともあり、知識を整理しやすかったです。一方で、生理学・薬理学・内科などの基礎と臨床をつなぐ分野は苦手でした。
何度も過去問を解いて、参考書を見ながら理解を深めようとしましたが、時間が足りず、インプットしきれないまま本番を迎えてしまいました。
後半は「理解」よりも「見覚えのある問題を増やす」という発想に変わっていて、それが本当の実力には結びつかなかったと思います。
今振り返っての反省点
――今振り返って、「こうすればよかった」と思うことはありますか?
YYさん:
現役のときは、自分の得意な分野ばかりを繰り返していました。苦手な内科などを“後回し”にしていたのが最大のミスです。
一浪のときも、過去問を5年分だけ回していたので問題数が少なすぎました。もっと多くの年度を解いて、幅広い出題パターンに慣れておくべきでした。
そして何よりも、「一人でやらないこと」。一人で黙々と進めていたせいで、自分の勉強を客観的に見直す機会がなくなっていました。今思えば、仲間と話しながら勉強していれば、違う気づきが得られたと思います。
不合格の原因と課題
現役時の課題
――まず、現役時代の不合格の原因を振り返ってみていかがですか?
YYさん:
現役のときは、勉強法そのものが合っていませんでした。班活動でスライドを作ったり、みんなに教えたりする時間が多く、その準備に時間を取られすぎてしまいました。
「教える=自分の理解につながる」と思っていたのですが、実際は発表準備ばかりで、自分の弱点を埋める時間がほとんどなかったです。その結果、臨床系や苦手な分野に手が回らず、勉強の“量”も“質”も十分ではありませんでした。
一浪時の課題
――一浪のときは、どのような課題がありましたか?
YYさん:
現役のときに班がうまくいかなかったので、一浪のときは「もう人に振り回されたくない」と思い、一人で勉強するようになりました。
でも、それが逆効果だったと思います。一人だと、自分の考えが偏っていることに気づけないんです。わからない問題が出てきても、誰にも相談できずにモヤモヤしたまま進めていました。その結果、同じような間違いを繰り返してしまうことも多かったです。
今振り返ると、「孤独な勉強」は自分に合っていなかったと思います。やる気はあっても、モチベーションを保つのが難しく、結果的に“効率の悪い努力”になってしまいました。
メンタル・生活面の影響
――勉強以外の面で、影響があったことはありますか?
YYさん:
一浪のときも体調は悪くなかったんです。ランニングを日課にしていて、むしろ健康面には気を使っていました。でも、今思えばその「走る習慣」が少し行き過ぎていました。
勉強よりも走ることが生活の中心になっていて、体力はついても勉強の時間と集中力が削られていました。「健康的な習慣」も、やり方を間違えると逆に足を引っ張ることがあると感じました。
見えてきた“本当の原因”
――最終的に、不合格の一番の原因は何だったと思いますか?
YYさん:
結局のところ、自分の勉強を客観的に見直せなかったことだと思います。「これだけやれば大丈夫」という思い込みがあり、どこかで“できている気”になっていたんです。
本当は、他の人と意見を交わしたり、模試の結果をもとに弱点を分析したりする時間をもっと取るべきでした。頑張ること自体はできても、その方向性がズレていた――それが最大の原因だったと思います。
試験直前・本番の様子
試験直前の心境
――試験直前はどんな気持ちで過ごしていましたか?
YYさん:
現役のときは、「ついにこの日が来たか」という感覚でした。自信はなく、焦りよりも「まあ仕方ないか」という諦めに近い気持ちでしたね。もし落ちても他の仕事をすればいいか、という軽い気持ちもありました。
一浪のときは、さすがに「今度こそ合格したい」と思っていました。ただ、思うように集中できず、勉強しても内容が頭に入ってこない日が続きました。
「これで本当に大丈夫なのか」という不安が常にあって、心のどこかでは「また失敗するかもしれない」と感じていました。
本番当日の様子
――当日はどんな状態で試験に臨みましたか?
YYさん:
現役のときは意外と落ち着いていました。試験会場の雰囲気に飲まれることもなく、淡々と受けることができました。ただ、問題を解きながら「これもやっておけばよかったな」と思う場面が多く、勉強不足を痛感しました。
一浪のときは逆に、緊張と焦りで落ち着かなかったです。問題を読んでいても集中できず、内容が頭に入ってこない瞬間がありました。
「今の自分にはこれが限界かもしれない」という無力感を感じながら、最後まで気持ちを切り替えられませんでした。
印象に残った問題・試験後の手応え
――印象に残っている問題や、本番後の手応えはありますか?
YYさん:
一浪のときに「ツシマヤマネコ」の問題が出たんです。自分はイリオモテヤマネコだと思い込んでいたので、
「ああ、やってしまった……」とその瞬間に思いました(笑)。
そういう細かい知識の差が点数に響くんですよね。
試験後は、現役のときも一浪のときも、手応えはほとんどありませんでした。現役のときは「早く現実から逃げたい」と思ってすぐ旅行の計画を立てましたし、一浪のときは「ギリギリどうかな……」と思いながらも、答え合わせをする気にもなれず、現実を見るのが怖かったです。
結果を受けて
不合格を知った瞬間の気持ち
――試験結果を見たとき、最初にどんな気持ちになりましたか?
YYさん:
現役のときは、「やっぱりか……」という感覚でした。自分でも頑張り切れなかった自覚があったので、ショックというよりも納得の方が強かったです。
「次の1年はどうしようかな」「映画館でバイトでもしようかな」と、現実的なことを考えていました。
そのときはまだ、国試を“自分の人生の中心”として捉えきれていなかったと思います。
一浪のときは、本当に堪えました。「まさかまた落ちるとは」と頭が真っ白になって、しばらく何も考えられませんでした。
それでも、どこかで「もう一度受けるしかない」という気持ちも芽生えていました。辞めるという選択肢はなく、やめたあとの不安の方が大きかったです。
周囲の反応
――周囲の方々はどんな反応をされていましたか?
YYさん:
現役のときは、親に怒られました(笑)。
でも、友達や先生は責めることなく「次があるよ」と励ましてくれました。
一浪のときは、さすがに親もショックが大きかったようで、言葉にしなくても落ち込んでいるのが分かりました。それでも、友人たちは変わらず優しく接してくれて、救われました。
不合格から得た気づき
――不合格を経験して、どんな気づきがありましたか?
YYさん:
まず感じたのは、「限られた期間に全力を出すこと」の大切さです。国試は“気づいたら本番が来ている”試験なんです。現役のときも一浪のときも、「まだ時間はある」と思っていたけれど、その油断が命取りになりました。
そしてもう一つは、「一緒に頑張る人がいることの重要性」です。一浪のときは、班での不和をきっかけに一人で勉強しましたが、結果的にその孤独が自分を追い込むことになりました。
わからないことを共有したり、励まし合ったりする環境がどれほど大切か、失って初めて実感しました。
次の挑戦に向けて
再挑戦を決めた理由
――2度の不合格を経て、それでももう一度挑戦しようと思えたのはなぜですか?
YYさん:
正直、最初は何も考えられませんでした。「また落ちた」という現実を受け止めるだけで精一杯でした。でも、時間がたつにつれて「結局、自分にはこれしかないな」と思うようになりました。国試を諦めることの方が、合格できなかったことよりも怖かったんです。
やめてしまったら、その先にある不安がずっと残る気がしました。だから「もう一度受けるしかない」という気持ちは、自然と自分の中に生まれていました。
浪人期に入る前にやっておくべきこと
――改めて浪人生活を始める前に、「やっておけばよかった」と感じたことはありますか?
YYさん:
勉強を始める前に、思い切り遊んでおけばよかったですね。
浪人が始まると気持ちに余裕がなくなるので、最初にリフレッシュ期間を取っておくことは意外と大事だと思います。
中途半端に勉強を始めるよりも、気持ちをリセットしてからスタートした方が集中力が続きます。心に余裕がないと、何をしても焦りが出てしまうんですよね。
現役・一浪との違い
――現役・一浪のときと比べて、気持ちの変化はありましたか?
YYさん:
一番の違いは「精神的な余裕」です。現役のときは「なんとかなる」、一浪のときは「これだけやれば大丈夫」と、どちらもどこかで慢心がありました。
でも、二度失敗してようやく気づきました。焦っても意味がないし、コツコツ積み重ねるしかないということに。
三度目は、“特別なことをしよう”ではなく、“当たり前のことを丁寧に積み上げる”という意識に変わっていました。
その気持ちの変化が、最終的に合格につながったと思います。
まとめ
2度の不合格を経験しながらも、諦めることなく挑戦を続けたYYさん。
その過程で見えてきたのは、「努力の方向を見誤らないこと」と「一緒に頑張る人の大切さ」でした。
失敗を恐れず、前を向いて進み続けたその姿勢は、これから国試に挑む人たちにとっても大きな励ましになるはずです。
次回予告:合格体験記へ
三度目の挑戦でついに合格をつかんだYYさん。
そこには、これまでの失敗から学んだことを活かした「逆転の一年」がありました。
次回の 合格体験記 では、勉強法の変化、合格直前の過ごし方、そして合格を知った瞬間の想いをお届けします。



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