「公務員獣医師に興味はあるけれど、インターンってどう参加すればいいの?」
そんな疑問を抱えている獣医学生は多いのではないでしょうか。
インターンや実習は、公務員獣医師の仕事内容を実際に体験できる貴重な機会です。しかし、実施時期や応募方法、体験内容は自治体によってさまざまで、情報が一か所にまとまっていないために迷ってしまう学生も少なくありません。
この記事では、現役の公務員獣医師に取材した内容をもとに、インターン参加の流れから応募のコツ、当日の心構えや注意点までを一通り解説します。これを読めば、初めてのインターンに臨む準備ができるはずです。
「公務員獣医師の世界をのぞいてみたい」「将来の選択肢を広げたい」
そんな学生に向けて、これからの一歩を踏み出すための実践的なガイドをお届けします。
公務員獣医師にはどんな働き方があるの?

公務員獣医師の仕事は「動物の診療」よりも、社会全体を守る役割に重点があります。
勤務先や担当部署によって具体的な業務は変わりますが、大きく分けると次のような分野があります。
- 畜産課・家畜保健衛生所
家畜伝染病の発生時に防疫活動を行ったり、農家を巡回して健康管理や衛生指導を行う。 - 食肉衛生検査所
食肉が安全に流通するよう、と畜場で解体された肉の検査を担当。消費者の食の安全を支える重要な現場。 - 保健所
犬や猫の動物愛護行政、狂犬病予防、動物取扱業者の監督などを担当。地域住民と直接関わる機会も多い。 - 動物愛護センター
保護動物の管理や譲渡活動、啓発イベントを行い、人と動物が共に暮らす社会づくりを推進。 - 輸入検疫所
空港や港で動物や動物製品の輸入検査を行い、海外からの感染症侵入を防ぐ。
このように、公務員獣医師の仕事は 畜産・公衆衛生・動物愛護・国際検疫など多岐にわたります。
実習やインターンでは、こうした業務を一通り体験できるようにプログラムが組まれており、将来像を描くうえで大きなヒントになります。
公務員獣医のインターンでは何をするの?

公務員獣医師の仕事は臨床とは大きく異なり、イメージが湧きにくい学生も多いと思います。
インターンに参加すると、実際にどんな現場を体験できるのか気になりますよね。ここでは、インターンで体験できる内容やその目的について整理します。
複数の施設を体験できる
多くの自治体では オムニバス形式を採用しており、1日ごとに異なる部署を回る形でインターンが進みます。
たとえば初日は動物愛護センターで保護動物の管理や譲渡活動を見学し、2日目は食肉衛生検査所でと畜検査の流れを体験、3日目には家畜保健衛生所で防疫業務や農家巡回に同行…という具合です。
短期間で複数の現場を渡り歩くことになるため、行政獣医師の仕事全体を俯瞰的に理解できるのが大きな特徴です。臨床実習のように一つの現場で深く学ぶのとは異なり、幅広さを体感できるのが公務員インターンの魅力と言えます。

回る施設は自治体によりさまざまで、それぞれの産業や特産などを強く反映することが多いです。また自治体によっては回る施設を自分で選べるところもあるので、ぜひ色々な自治体を調べてみてください。
主な体験内容は自治体によって異なる
体験できる内容は自治体ごとに特色があります。
畜産が盛んな地域では畜産関連に重点が置かれることもあれば、都市部では愛護や食品衛生に偏ることもあります。
インターンの一番の目的は「行政獣医師を知ること」
インターンは「知識や技術を試される場」ではなく、行政獣医師という仕事を知るための学びの場です。実習中に専門的なスキルを発揮することは求められません。その代わりに、現場を見て、職員の動きを観察し、行政の仕組みを肌で感じることが大切です。
参加することで、これまで授業で学んだ法律や公衆衛生の知識がどのように現場で使われているのかが見えてきます。座学と実務が結びつく瞬間を体験することで、「自分が学んでいる内容は社会でこう役立つのか」と納得感を持てるでしょう。
さらに、インターンで得た経験は就職活動の場面でも活きてきます。面接では必ずといっていいほど「インターンに参加したか」「そこで何を学んだか」を問われます。そのときに、自分の言葉で具体的なエピソードを語れることは大きな強みになります。
そして何より重要なのは、自分にこの職種が合っているかを考えるきっかけになることです。現場を体験することで「自分は人と関わる仕事が好きだ」「検査業務の正確さを追求するのが得意だ」といった自己理解が深まり、将来のキャリア選択に直結していきます。
インターンはいつから・どのくらい行けばいい?

公務員獣医師のインターンは、学年やタイミングによって意味合いが変わります。
「いつ行くべきか」「どのくらいの期間行けばいいのか」は、多くの学生が迷うポイントです。ここでは一般的な目安を整理します。
実施時期は自治体によって異なる
多くの自治体では夏期休暇中に実施されますが、必ずしも夏だけではありません。春や秋に募集を行う自治体もあり、実施時期は地域や自治体のスケジュールに左右されます。
そのため、早めに情報収集を始めておくことが大切です。大学からの案内だけに頼らず、自治体の公式サイトや就職イベントを定期的にチェックすると安心です。
期間は数日から1週間程度が一般的
インターンの期間は短期集中型が多く、数日から1週間程度で終わります。
ただし短期間でも、複数の部署を回れるオムニバス形式になっているため、限られた日程の中で幅広く行政獣医師の業務を体験できるのが特徴です。
「短いから意味がないのでは?」と不安に思う学生もいますが、実際には十分に学びが得られる内容になっています。
複数の自治体を見て比較するのがおすすめ
1か所だけでなく、複数の自治体のインターンに参加することで見えてくる違いもあります。
- 畜産が盛んな地域は家畜防疫や農家巡回が中心
- 都市部では食肉衛生や愛護行政が主体
- 小規模自治体では業務が幅広く、職員との距離も近い
このように地域ごとに体験できる内容や雰囲気が大きく異なるため、比較することで自分に合う職場像を描きやすくなるのです。
どうやってインターン先を探せばいい?

「公務員獣医のインターンに行きたいけど、どこで情報を集めればいいの?」
多くの学生が最初にぶつかるのがこの疑問です。自治体ごとに募集方法や案内ルートが違うため、一つの方法だけに頼るとチャンスを逃してしまう可能性があります。ここでは代表的な探し方を紹介します。
自治体の公式サイトをこまめにチェック
各自治体のホームページにはインターン情報が掲載されることがあります。特に人事委員会や畜産課のページは要チェック。募集開始が急に出ることもあるので、定期的に確認しておくと安心です。

日本獣医師会のホームページに求人情報が掲載されることもあります。自治体だけでなく、獣医師会の情報もあわせてチェックしておくと見逃しが減ります。
大学経由で募集が来ることもある
大学を通して自治体から募集案内が届く場合もあります。ただしすべての自治体が大学に情報を送るわけではないため、「大学の案内=全て」ではありません。あくまで情報源の一つとして利用しましょう。
VPキャンプや就職イベントを活用する
全国の獣医学生向けにインターン情報を集めた「VPキャンプ」や、学内・学外の就職説明会では、複数の自治体が一度に情報を提供することがあります。効率的に比較できる貴重な機会なので、積極的に参加するのがおすすめです。
先輩や教授からの紹介を頼る
実際にインターンへ参加した先輩や、自治体とつながりのある教授から紹介を受けるルートも根強く残っています。公式サイトや募集要項だけではわからない 現場の雰囲気や実習中の立ち振る舞い、応募時のちょっとしたコツまで聞けるのが大きな魅力です。
特に、同じ大学から過去にその自治体へインターンに行った学生がいれば、体験談はリアルで参考になります。たとえば「思ったよりも座学が多かった」「農家訪問では積極的に話しかけると印象が良い」など、参加者にしかわからない生の情報は次に参加する学生の武器になります。

教授からの紹介も、自治体との信頼関係をベースにしていることが多く、スムーズに受け入れてもらえるケースがあります。「公式には募集していないけれど、教授のつながりで参加できた」という話もあるため、周囲に積極的に相談してみる価値は十分にあります。
インターン参加は採用に有利?

「インターンに行ったほうが採用試験で有利になるの?」
これは多くの学生が気になるポイントです。実際に、インターン経験が合否に直接関わるのかどうかは気になりますよね。ここでは、公務員獣医師の採用におけるインターンの位置づけを解説します。
直接的な加点はない
インターン参加そのものが採用試験で点数化されることはありません。筆記試験や面接の評価が合否の中心であり、インターンでの評価が点数に直結することはないと考えておきましょう。
しかし面接で必ず聞かれる
一方で、面接では「インターンに参加したかどうか」「そこで何を感じたか」を必ずといっていいほど聞かれます。
参加していないと答えに詰まってしまい、不利になる可能性があります。逆に参加していれば、自分の体験談を具体的に語ることができ、説得力のあるアピールにつながります。
比較のために複数参加するのがおすすめ
インターンに参加する最大のメリットは、業務内容や職場の雰囲気を実際に比較できることです。
複数の自治体を経験しておくと、「自分は畜産分野に興味がある」「愛護行政が向いている」といった適性を見極めやすくなります。それが結果的に、面接での志望動機をより明確に語れることにつながります
インターン前にやっておくと良い準備は?

「インターンに参加する前に、どんな経験や準備をしておけばいいの?」
これは多くの学生が気になるポイントです。実際にはインターンで高度な知識や技術を試されるわけではありませんが、学生のうちに積んでおく経験や学んでおく授業を把握しておくと理解が深まりやすくなります。
インターンそのものが最大の準備
「これをやったから採用に直結する!」という活動はありません。
ですが、インターンに行けば行くほど、自分の経験値が増えていきます。複数の自治体で体験を積んでおけば、面接で話せるエピソードも格段に増え、他の受験生との差別化につながります。
役立つ授業や実習を意識しておく
授業の中では解剖・病理・感染症・公衆衛生・法律・生化学などが特に役立ちます。
たとえば、食肉衛生検査所では解剖や病理の知識が直結し、保健所や愛護センターでは法律や公衆衛生の理解が求められます。インターンの場で完璧に答える必要はありませんが、自分なりに得意な分野があると現場での理解度が高まるでしょう。
バイトやボランティアも糧になる
動物愛護団体のボランティアや農場実習など、大学の外での経験も無駄にはなりません。公式には採用に有利とされるわけではないものの、「動物や現場に触れてきた」という実体験はインターンでの理解を助け、面接でのエピソードにもなります。
インターン中はどんな心構えで臨むべき?

せっかくインターンに参加しても、ただ見ているだけでは学びが浅くなってしまいます。
「どんな姿勢で臨めばいいのか」「どんな人がこの仕事に向いているのか」を意識しておくと、体験から得られるものがぐっと増えます。
繁忙期の現場を体感する気持ちで
部署によって忙しさの波があり、食肉衛生検査所ではクリスマス前が繁忙期、畜産課では家畜防疫の検査が重なる時期が忙しくなります。インターン中に必ず繁忙期に当たるわけではありませんが、「こういう時期には現場がどうなるのか」を職員に聞いてみると、働き方のリアルが見えてきます。
同じ作業を丁寧に続けられるかを意識する
公務員獣医師の仕事は、突発的な防疫対応もあれば、毎日同じ検査や記録を淡々と続ける場面も多くあります。
インターン中は「この作業を毎日続けるとしたら自分はどう感じるか」を意識してみましょう。向き不向きを考える良い材料になります。
人との関わり方に注目する
農家や市民への説明、同僚との連携など、人との関わりは避けて通れません。感情のコントロールや人当たりの良さは現場でとても大切な力です。インターン中は、職員がどんな風にコミュニケーションを取っているかを観察してみると学びになります。
自分の得意・不得意を振り返る
イレギュラーな出来事にわくわくできる人もいれば、毎日決まった業務を安心して続けたい人もいます。
インターンは「自分がどちらのタイプか」を考えるきっかけにもなります。自分の性格に合った働き方を見つけることが、将来のキャリア選択のヒントになります。

鳥インフルエンザのような重大な感染症が発生すると、突発的に通常とは違う業務が生じることもあります。そうした緊急対応をどう感じるかは、自分に公務員獣医師が向いているかを考えるうえでの一つの判断材料になるでしょう。
公務員獣医師を進路の選択肢にするために大切なこと
公務員獣医師は「安定しているけれど決して楽な仕事ではない」とよく言われます。
現場では突発的な感染症対応や、地道な検査業務を続ける日々もあります。しかし、その現実をインターンで知ることで、自分にこの進路が合っているかどうかを冷静に判断できるのです。
インターンを通じて「やってみたい」と思えれば、その後の学びや試験勉強にも力が入りますし、逆に「自分には合わない」と感じても、それは大切な気づきです。最終的に臨床や研究を選ぶとしても、行政の現場を一度経験しておくことはキャリアの幅を大きく広げてくれます。
インターンは合否を決める場ではなく、未来の自分を探す場。
迷っているなら一歩踏み出し、公務員獣医師の現場を体験してみてください。
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