獣医学部の学生にとって、学外実習は「現場を知る」だけでなく将来の進路を考える大きなチャンスです。
しかし、
「いつから実習に行けばいい?」「どんな分野を経験すべき?」「申し込みってどうやるの?」と疑問や不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、獣医学生が 実習の全体像 をつかみ、失敗しないための基本ステップを解説します。
また、小動物・大動物・公務員など 分野別ガイドへの導線 も用意しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
獣医学生の学外実習って何をするの?授業やバイトとはどう違う?

授業やバイトとは違い、実習・インターンは獣医師の現場に身を置く学びの場です。
そこでどんな経験ができ、どのような力が身につくのかを見ていきましょう。
実習・インターンは現場体験とキャリア形成の第一歩
獣医学部の学生にとって「実習・インターン」は、学内では得られない現場感覚を学び、将来の進路を考えるための大切な機会です。
参加先は動物病院(小動物・大動物)、家畜保健衛生所、製薬企業、動物園・水族館、食品検査施設など幅広く、体験内容も多様です。
これらの経験は、卒業後の進路を決める上で欠かせない情報源となります。
実習・インターンで得られる3つの力
現場理解が深まる
大学の講義や座学では学べない、「現場ならではのリアル」を体験できるのが最大の魅力です。
たとえば…
- 小動物病院では診療補助や検査準備、手術の立ち会いを通じて、動物と飼い主の関わり方まで肌で感じられる。
- 大動物の牧場・診療所では分娩介助や予防接種、防疫業務などを目の当たりにできる。
- 製薬企業では薬の開発プロセスや臨床試験について知り、獣医師としての研究職の可能性を探れる。
- 公務員(家保・保健所・研究施設)では食品衛生や感染症対策の現場を経験し、社会全体を支える獣医師の役割を実感できる。
現場での空気感や忙しさ、獣医師やスタッフの動き方を間近で見られることで、「自分に合うか・合わないか」の感覚を掴むきっかけにもなります。
社会人としての基本を学べる
実習・インターンは「働く側」の視点で現場に立つ初めての機会です。
服装や髪型、挨拶、報連相など、学生生活ではあまり意識しなかった社会人マナーが求められます。
- メモを取りながら指示を正確に理解する力
- 多職種のスタッフと協力して動くコミュニケーション力
- 忙しい現場での臨機応変な行動力
これらはどの進路に進んでも必ず役立つスキルです。
進路のイメージが明確になる
獣医師の仕事は、小動物の臨床だけではありません。
- 研究職
- 公務員・行政獣医師
- 食品衛生や検疫
- 教育分野 など多岐にわたります。
実習・インターンではそれぞれの分野で働く獣医師の姿を見て、「自分はどの分野に向いているのか」を考える貴重な機会になります。
こうした気づきは、将来の進路を決める上で大きな財産になります。
獣医学生の学外実習はいつ頃から行き始めるべき?

結論からお話しすると、どんな学年からでも学外実習には行くことが可能です。かつ、低学年のうちから行っておくのがおすすめです。
もちろん学年が低い場合にはやれることや行ける施設の範囲に限りがありますが、それでも実習に行くことで進路の解像度や学習への意欲が高まります。そこでここからは、学年ごとの実習先や内容の特徴を紹介します。
低学年(1~2年生)の学外実習
1~2年生の段階では、義務付けられた学外実習はありません。しかし、自主的に学外実習へ参加することは可能で、動物病院、動物園、水族館などの施設では低学年の学生を受け入れてくれるところもあります。実際に現場で動物に触れることで、獣医師という仕事への理解が深まり、将来の方向性を考える良い機会となるでしょう。
ただし、公務員系の施設や民間企業は対象年齢が決まっていることもあり、1~2年生では受け入れ不可の場合があるため、事前に確認が必要です。
中学年(3~4年生)の学外実習
3年生以降になると、学外での短期実習を経験し始める学生が増えてきます。4年生になると、より専門的な学外実習の選択肢が広がります。
しかし、この時期はCBT(Computer-Based Testing)やOSCE(Objective Structured Clinical Examination)などの試験を控えているため、臨床実習に参加できる機会はまだ限られています。
それでも、研究室配属をきっかけに学外の研究機関や企業での実習に参加するチャンスも増えていきます。特に、研究室での活動に精力的に取り組んでいる学生にとっては、この時期の学外実習がキャリアの方向性を決めるきっかけとなることもあります。
高学年(5~6年生)の学外実習
5~6年生になると、CBT・OSCEに合格し、スチューデントDr.として本格的な臨床実習に参加できるようになります。動物病院、研究機関、製薬企業、官公庁などでの学外実習が本格化し、実際の診療業務に近い経験ができるようになります。
また、この時期は就職を見据えた学外実習やインターンシップの機会が増えてきます。民間企業や自治体のインターンシップに参加することで、卒業後の進路選択の幅を広げることができるため、積極的に活用すると良いでしょう。
大学ごとの違い
学外実習の制度は大学によって異なります。一部の大学では学外実習が必修となっており、一定の期間やコマ数の実習が求められる場合もあります。
自分の大学のカリキュラムを確認し、どのような学外実習が必要なのか事前に把握しておくことが重要です。

私の大学では、合計5日間の学外インターンが単位取得に必須となっていました。そのため地元の近くの動物園にアポを取り、実習へ行かせていただきました。学内やバイトをしていた動物病院では得られない、貴重な経験をさせていただきました。
海外での学外実習について
現在、具体的な情報は募集中ですが、一部の大学では海外の動物病院や保護施設での実習を推奨していることがあります。海外での実習を経験することで、日本では学べない獣医学の実践方法や異なる環境下での対応力を養うことができます。興味がある場合は、大学の国際交流窓口や実習受け入れ先に問い合わせてみるのも良いでしょう。
分野別に見る実習の特徴と選び方

獣医学生の実習・インターンは、行き先によって学べることや現場の雰囲気が大きく異なります。
「どの分野に進むかまだ迷っている…」という人も、さまざまな分野に触れてみることで視野が広がり、自分に合うキャリアのヒントが見つかるはずです。
ここでは 小動物・大動物・行政・企業 の特徴を簡単に紹介します。
気になる分野があれば、詳細ガイドもぜひチェックしてみてください。
小動物臨床を目指すなら
動物病院では診察や手術の見学に加え、入院動物のケアや診療補助を体験できます。
個人病院から二次診療施設まで規模も方針もさまざまで、現場のスピード感やスタッフ間の連携を肌で感じられるのが魅力です。
「夜間救急の現場で学びたい」「エキゾチックアニマルを扱う病院を見てみたい」といった希望があれば、早めに情報収集を始めましょう。
馬や牛などの大動物に挑戦したいなら
牧場や畜産農家、競走馬の施設では、分娩や削蹄、診療補助といった迫力満点の現場を体験できます。
特に馬の実習は、JRA関連施設や乗馬クラブなど募集時期が早く定員も少なめなことがあるので、低学年からのアクションが成功の鍵です。
「いつか大動物臨床に携わりたい」「一次産業に関わる獣医師の働き方を知りたい」人におすすめ。
公務員・研究職を視野に入れるなら
公務員獣医師の現場では、家畜伝染病の防疫、食品衛生検査、動物愛護行政といった臨床とは異なる獣医師の役割 を知ることができます。
一方、製薬企業や検査機関では研究・開発に携わる獣医師の姿を間近で見られ、臨床以外のキャリアを考えたい学生にぴったりです。
「将来は公衆衛生や研究の道も検討している」という人は、視野を広げるためにもぜひ訪れておきましょう。
実習先を決めたらどう動く?

「行きたい実習先が決まったけど、いつから連絡を始めたらいい?」「どんな方法で連絡すれば失礼がない?」と悩む獣医学生は多いものです。
ここでは、実習・インターンに向けて動き出すタイミングや、具体的な連絡方法を紹介します。
動き始めるタイミングは長期休暇の3~4か月前が目安
実習先への連絡は、夏休みや春休みといった長期休暇の3~4か月前が理想です。
特に人気の動物病院や研究施設はすぐに枠が埋まるため、早めに予定を立てることが重要。
低学年の自主実習であれば直前でも対応してもらえることもありますが、高学年の就職活動を兼ねたインターンの場合は、枠取りの競争が激しいため、5~6年生は半年前からの準備を意識しましょう。
- 🐾 低学年:春・夏の休みに行くなら、1~2月や5~6月から連絡
- 🐎 高学年:インターンは進路相談も兼ねるため、遅くとも3~4月頃から調整
実習先への連絡方法は「メール→電話」が基本
連絡手段は大きく3パターンありますが、基本は 「メールで問い合わせ → 電話で確認」 の流れです。
- メール
・事前に施設のWebサイトやSNSを確認し、実習の受け入れ有無を調査
・担当者が忙しい時間帯(診療開始直後・夕方)は避ける
・件名と本文で簡潔に「誰が・いつ・どんな実習を希望するのか」を伝える - 電話
・メールを送信して数日経っても返信がなければ電話で確認
・「学生実習担当の方につないでいただけますか」と依頼 - 就活サイト・エージェント経由
・特に大規模な動物病院や企業では、就活サイトからのエントリーも可能
メール・電話での連絡はどの分野でも丁寧さがカギ
メール例文(全分野共通)
件名: 獣医学部○年 ○○(氏名) 実習・インターン希望のご相談
〇〇〇〇(施設名・部署名)
ご担当者様
突然のご連絡失礼いたします。
私は〇〇大学獣医学科〇年の○○(フリガナ)と申します。
貴施設の取り組み内容に深く関心を持ち、ぜひ実習・インターンを通じて学ばせていただきたくご連絡差し上げました。
以下の日程のうち、貴施設のご都合の良い期間で実習をお願いすることは可能でしょうか。
【希望日程】〇月〇日~〇月〇日(〇日間)
ご多忙のところ恐れ入りますが、実習の可否や詳細についてご教示いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
〇〇大学 獣医学科〇年
○○ ○○
メールアドレス:xxxxxx@xx.xx
電話番号:090-xxxx-xxxx
- 🐾 臨床の場合:「診療内容や理念に共感し…」などの表現
- 🏢 企業・研究機関の場合:「研究開発内容・事業内容に関心があり…」に置き換え
- 🏛 行政の場合:「公衆衛生業務や防疫の取り組みに関心があり…」に置き換え
電話連絡のポイント(全分野共通)
- 自己紹介と目的を簡潔に伝える
「私は〇〇大学獣医学科〇年の○○と申します。実習・インターンについてご相談したくお電話いたしました」 - 担当部署を尋ねる
「実習・インターンの担当の方におつなぎいただけますか?」 - 忙しい時間帯は避ける
- 🩺 動物病院:診療時間帯(午前・夕方前後)はNG
- 🏢 企業:始業直後・終業前は避ける
- 🏛 行政:昼休みや窓口時間外は避ける - 相手の都合を確認
「今お時間よろしいでしょうか?」と一言添える
実習当日の心構えと注意点

実習・インターン当日は、現場での学びを最大化するための準備や心構えが重要です。
ここでは 「実習前」「実習中」「実習後」 に分けて、獣医学生が押さえておきたいポイントを解説します。
実習前に準備しておくべきこと
実習・インターンに行く前には、次の3つを必ず整えておきましょう。
現場で気をつけるマナー
実習先では「社会人」として見られています。次のポイントに注意しましょう。
💡 現場で「学生だから」と甘えず、社会人の一員として振る舞う意識が大切です。
実習後にやるべきこと
実習は「やりっぱなし」にしないことが重要です。
実習・インターンは将来にどう活きる?

実習やインターンでの経験は「その場限り」では終わりません。
現場で学んだことは、就職活動やキャリア形成に直結し、獣医師としての未来を切り拓く大きな武器になります。ここでは、実習後にその経験をどう活かすかを具体的に見ていきましょう。
就職活動で強みになる実習経験
実習・インターンで得た体験は、履歴書や面接での大きなアピールポイントになります。
「現場で何を学んだか」「どのような力が身についたか」を具体的に整理しておくことで、説得力のある自己PRにつながります。
実習を通じて広がる人脈と情報
現場で出会った先生や先輩、スタッフとのつながりは、将来のキャリアにおいて貴重な財産です。実際に「実習先の推薦で内定をもらえた」という先輩も少なくありません。積極的に交流し、人脈作りを意識しましょう。
振り返りが進路選択の軸になる
実習後は「何が得意で何にやりがいを感じたか」を振り返ることが重要です。
この自己分析が、今後の進路選択やキャリア設計の土台となり、「自分らしい獣医師像」を描くヒントになります。
実習・インターンを未来につなげよう
獣医学部の実習・インターンは、知識や技術を学ぶだけでなく、将来のキャリアを考える大切なステップです。目的を持って挑めば、経験が自信となり進路選択の軸にもなります。
これからの記事では、分野別の実習ガイドとして「小動物・大動物・公務員・企業」それぞれの特徴や動き方を詳しく解説します。分野ごとに必要な準備や現場の雰囲気を掴んで、あなたに合った進路を見つけてください。
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