獣医師になるために避けて通れない「獣医師国家試験」。
しかし実際のところ、どれくらい難しいのか、どんな勉強をすれば合格できるのか気になる方も多いはずです。
本記事では、現役の獣医師である筆者が、
- 試験の難易度と実際の出題範囲
- 勉強期間の実情と効果的な勉強法
- 合格者・不合格者インタビューから見えたリアルな体験をわかりやすく紹介します。
「これから国試を目指す人」「勉強計画を立てたい人」は、ぜひ参考にしてください。
国家資格「獣医師」とは

国家資格「獣医師」とは、取得することでさまざまな動物の診察・治療や衛生的な検査、薬物や実験動物の扱いなど多くの業務を行えるようになる資格です。
この国家資格を得るためには全国の「獣医学科」で6年間学び、必要な単位をすべて取得したうえで「獣医師国家試験」に合格する必要があります。
そのため、獣医師国家資格を取得するために必要なステップは以下の3つといえます。
- 全国17大学の「獣医学科」に入学する
- 獣医学科で6年間学び、必要な単位をすべて取得する
- 獣医師国家試験に合格する
獣医学科がある大学は少なく毎年多くの受験生が志望するため、各獣医学科の倍率はとても高いです。ここを加味すると、国家資格「獣医師」の資格取得は狭き門といえます。
獣医師国家試験の難易度を徹底分析

ここまで紹介した国家資格「獣医師」ですが、資格取得のための難易度はどれくらいなのでしょうか。
結論から言うと、獣医師国家試験の難易度は決して低くありません。
一般的には獣医師国家試験の合格率は90%以上とされており、簡単な印象を受ける方も多いでしょう。しかし、獣医学科で6年間学び、かつ国家試験のための勉強をしっかりやることでこの合格率は達成できています。
そこでここからは、獣医師国家試験の実際の難易度について紹介をしていきます。
出題範囲がとにかく広い
獣医師国家試験の難易度を高める要素の一つとして、出題範囲の広さが挙げられます。
獣医師国家試験に出題される問題は、獣医学科で6年間学んだ内容すべてから出題されるため、非常に範囲が広いです。
大別すると以下の4種に分けられており、これらを網羅的に頭に入れておく必要があります。
- 衛生
- 基礎
- 衛生
- 臨床 (参考:農林水産省 獣医師国家試験出題基準)
これらはそれぞれ複数の分野に大別され、これらすべてを適切に頭に入れておくことは非常に難しいといえます。
勉強期間が短く集中勝負
獣医師国家試験の難易度を高めるもう一つの要素としては、勉強時間の短さが挙げられます。
獣医師国家試験にむけての勉強は、基本的に卒業論文のための研究・発表がひと段落ついてから本格的に行います。
国立大学の場合、卒業論文の発表・審査は11月中旬〜下旬に行われることが多く、基本的に2月に行われる獣医師国家試験への勉強期間は3か月足らずです。
高校生が大学受験に向けて行う受験勉強の期間は半年〜1年ほどが一般的なため、獣医師国家試験にむけての勉強期間は大学受験の半分以下ということになります。
膨大な量をこの期間で頭の中に入れる必要があるため、勉強期間の短さが獣医師国家試験の難易度を高めているといっても過言ではないでしょう。
教材・問題集の選択肢が少ない
獣医師国家試験の難易度を高める最後の要素は「対策問題集の少なさ」です。
医師や薬剤師、歯科医師、看護師のようなほかの医療系国家資格の場合、書店へ行くと多くの国試対策問題集が売り出されています。
ところが獣医師の場合、毎年の受験生が少ないこともあり国試対策問題集のバリエーションがとても少ないです。そのため、勉強がしやすいとはいえず、難易度が高いといえるかもしれません。
各大学で問題集・解説集を作ったり、有志が作った情報のまとめを利用するなど、各々での工夫がとても大切になるでしょう。
試験概要と合格基準

ここまで紹介した獣医師国家試験ですが、概要は以下のようになっています。
問題構成
獣医師国家試験は、以下のような問題構成で出題されます。
- 必須問題:獣医療・獣医学の基本的事項、獣医学の臨床的事項、衛生学に関する事項から50問
- A問題(学説試験):獣医療・獣医学の基本的事項から80問出題
- B問題(学説試験):衛生学に関する事項、獣医学の基本的事項から80問出題
- C問題(実地試験):衛生学に関する事項、臨床的事項で、獣医療の現場で起こりうる基本的な事項について60問出題
- D問題(実地試験):衛生学に関する事項、臨床的事項で、獣医療の現場で起こりうる総合的な事項について60問出題
各問題の傾向をきちんと理解したうえで、適切な勉強を進めていくのが大切です。
合格の基準
獣医師国家試験の合格基準は年によって変わる可能性がありますが、基本的には以下を基準として、これらをすべて満たしているかどうかで合否が決定されます。
- 必須問題の正答率が70%以上である。
- A問題、B問題、C問題、D問題の合計正答率が60%以上である。
注意点として、必須問題はそれ単体で70%以上の正答率をマークする必要があり、ここを落としてしまうと、たとえA~D問題で十分な正答率をマークしていたとしても合格することは出来ません。
試験日程・試験地
第77回獣医師国家試験の日時・試験日程は以下のようになっています。
試験日 | 試験時間 | 内容 |
令和8年2月17日(火) | 10:00~12:00 13:30~14:20 15:20~17:20 | 学説試験(A) 必須問題試験 学説試験(B) |
令和8年2月18日(水) | 10:00~12:00 13:30~15:30 | 実地試験(C) 実地試験(D) |
第77回獣医師国家試験の試験地は北海道、東京都、福岡県の3か所で、それぞれ以下の場所が試験地となっています。
北海道会場 | アスティ45 16階 会議・研修施設ACU札幌市中央区4条西5丁目 |
東京会場 | TOC有明 東京都江東区3丁目5番地7号 |
福岡会場 | 代々木ゼミナール福岡校 福岡市博多区博多駅前4丁目2番地25号 |
時間や場所を把握しておくだけで、勉強のしやすさや試験のイメージしやすさは相当変わります。正しい情報を整理して頭に入れておき、適切に勉強を勧められるようにしましょう。
獣医師国家試験に合格するための勉強法と考え方

ここまで獣医師国家試験について解説を行いましたが、やはり大切なのは「どのように勉強に取り組むか」です。
ここからは、獣医師国家試験に向けてどのような勉強をしたらいいのか、先輩方はどのような勉強をしていたのかについて解説を行います。
過去問を10年分繰り返す
合格者の多くが共通して口にするのは「過去問の徹底活用」。
国が出す問題の“意図”を読み取り、出題傾向を体で覚えることが最短ルートです。
過去10年近くの過去問をしっかりと解いて頭に入れ、すべての知識がつながった状態にしておきましょう。
スケジュールを立てて計画的に勉強する
国家試験の出題範囲は広いため、感覚的に進めると途中で破綻します。
ただやみくもに消化するだけでは、正しく知識を身に付けることは出来ません。
1日単位でやることを区切り、「範囲を決めて進める」ことが大切です。
GoogleカレンダーやNotionなどを使って学習計画を可視化すると、継続しやすくなります。
仲間と勉強することでモチベ維持
孤独になりがちな国試勉強。
一緒に進捗を共有し合える仲間がいるだけで、継続率は格段に上がります。
実際に、班活動を活用して合格を掴んだ学生も多くいます。
市販の問題集・参考書を活用する
先述のように、獣医師国家試験の勉強には参考書や問題集が少なく、過去問や各大学の有志の生徒が作成したまとめなどが、主な勉強のための資料となります。
しかし、少ないといっても問題集などが0というわけではありません。
獣医師国家試験を研究し、それに特化した参考書は存在し、そちらのほうが自分に合う、という人も中にはいるでしょう。
また。上記のようなまとめ+αの勉強として市販の問題集を利用するのも効果的です。
筆者の調べた範囲でおすすめできそうな問題集を以下にまとめていますので、興味のある方は購入を検討してはいかがでしょうか。
先輩のリアル体験から学ぶ「合格への道」
ここからは、実際に国試を経験した先輩たちの声を紹介します。
それぞれ異なる勉強スタイルの中に、共通して見える“成功の本質”があります。
国家試験 合格体験記 #01|過去問10年分×教科書重視の王道戦略
最初に紹介するのは、「教科書を軸にした正攻法」で合格を掴んだ先輩。
過去問を10年分解き込み、内容を教科書にひもづけて復習。
「なぜ間違えたのか」を徹底的に分析する姿勢が、合格の鍵となりました。
国家試験 合格体験記 #02|3か月で合格!メリハリ重視で結果を出した工夫
次に紹介するのは、勉強期間わずか3か月で合格した先輩。
「集中」と「息抜き」を明確に分け、睡眠でのリセット時間を大切にしたことで、
短期集中でも高いパフォーマンスを維持しました。
国家試験 合格体験記 #03|12月からロケットスタート!1日13時間×計画力
卒論後の12月から本格始動し、1日13時間の勉強を継続。
班活動で仲間と切磋琢磨しながら、「計画力×継続力」で合格を掴んだタイプ。
過去問7年分を3周するスケジュール設計は、短期決戦の理想形。
国家試験 合格体験記 #04|基本を極めて合格へ!教科書中心で堅実に突破
「基本を大切にすることが一番の近道」と語る先輩。
参考書よりも教科書を信じ、基礎理解を徹底的に固める勉強法で合格。
焦らず着実に積み重ねる姿勢は、多くの後輩の参考になるはずです。
国家試験 不合格体験記 #01|スケジュール管理と慢心の落とし穴
一方で、惜しくも不合格となった徳留さんのケースからも多くの学びがあります。
模試での好成績に油断し、計画が崩れたことを振り返りながら、
再挑戦に向けたマインドセットをリアルに語っています
王道を押さえ、地道に積み上げよう
獣医師国家試験は、決して「難しすぎる試験」ではありません。
出題傾向を理解し、基本を大切にしながら積み重ねていけば、必ず合格に近づきます。
- 過去問10年分で出題傾向を掴む
- 計画を立てて短期間でも集中
- 仲間と支え合いながら継続する
この3つを意識して勉強を進めれば、あなたも合格に手が届くはずです。
次は、実際に合格した先輩たちの体験記をチェックしてみてください。
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