「獣医学科を受験したいけれど、何から考えればいいのか分からない」
「獣医師になりたい気持ちはあるけれど、受験の全体像が見えていない」
そんな不安や疑問を感じている受験生や保護者の方は、決して少なくありません。
獣医学科の受験は、一般的な大学受験と同じように見えて、実は少し特殊です。大学の数が限られていること、学ぶ年数が6年間に及ぶこと、そしてその先に国家資格があることなど、事前に知っておきたい前提や構造がいくつも存在します。
ところが、受験勉強の話ばかりが先行してしまい「そもそも獣医学科受験とはどんな受験なのか」「どんな道のりを進むことになるのか」といった全体像を整理する機会は、意外と多くありません。
この記事では、獣医学科受験を目指すうえでまず押さえておきたい基礎知識と全体像を、順を追って解説していきます。具体的な勉強法や戦略に入る前に、「地図」を一度しっかり確認するための記事です。
これから獣医学科受験について考え始める人も、すでに目指している人も、まずはこのページで全体の前提を整理してみてください
獣医学科受験を理解するために、まず知っておくべき前提

獣医学科受験について調べ始めると、「勉強法」「科目対策」「おすすめ参考書」といった情報が先に目に入るかもしれません。
しかし、獣医学科受験は一般的な大学受験とは前提となる構造が大きく異なるため、勉強の話に入る前に、まず「どんな受験なのか」を整理しておく必要があります。
ここでは、合否や勉強効率に直結する以前の段階として、獣医学科受験を考えるうえで必ず知っておきたい前提条件を整理します。
全国17校という「超・狭き門」
獣医学科を設置している大学は、全国で17校しかありません。
これは他の理系学部と比べても、極端に少ない数字です。
工学部や理学部のように「同じ学部が全国に多数ある」状況とは異なり、獣医学科は受けられる大学そのものが限られているという特徴があります。この事実だけでも、獣医学科受験が特殊であることが分かります。
大学数が少ないため、受験の選択肢が限られる
大学数が少ないということは、そのまま受験の選択肢の少なさにつながります。
「この地域で受験したい」「このレベル帯の大学を複数併願したい」といった一般的な戦略が、獣医学科では成り立たないケースも珍しくありません。
結果として、受験校の組み合わせが組みにくい、併願戦略に制限が出やすいといった特徴が生まれます。これは勉強以前に、受験設計そのものが重要になる理由でもあります。
獣医学科受験は、理系の中でも入試設計が独特
獣医学科は理系学部に分類されますが、その入試の仕組みはいわゆる「理工学部型」とはかなり異なります。
大学ごとの配点構成や評価の比重、共通テストと個別試験の扱い方などに特徴があり、「理系だからこの受け方で大丈夫」と考えていると、ズレが生じやすい分野です。
そのため、獣医学科受験では理系一般の常識が必ずしも当てはまらないという前提を持っておく必要があります。
【比較】獣医受験の特殊性|科目構成と配点の「罠」

獣医学科受験は、「努力の量」以上に「努力の向け先」で合否が決まる世界です。
同じ理系学部でも、大学によって科目や配点のバランスが驚くほど異なります。この特殊性を知らずに突き進むと、「頑張っているのに届かない」という悲劇を招きかねません。
本格的な学習に入る前に知っておくべき、科目と配点の「3つの落とし穴」を解説します。
数学Ⅲは必須ではない?大学によって激変する受験科目
理系受験と聞くと、「数学Ⅲまで仕上げるのが当たり前」と思うかもしれません。
しかし、獣医学科受験ではこの常識は通用しません。実は、私立大学のほとんどが数Ⅲを必要とせず、国立大学でも数Ⅲなしで受験できるルートが存在するからです。
実際には、大学ごとに設計思想が大きく異なります。
- 数学Ⅲを課さない大学(私立の多くや、一部の国立)
- 理科が1科目で受験できる大学(戦略的な絞り込みが可能)
- 英語と理科の配点が極端に高い大学(得意を最大化できる)
つまり、「理系だから一律にこの科目を頑張る」という戦い方は、獣医受験においては非効率。
自分の学力特性と大学側の設計が噛み合っているかを早期に見極めることが、合格への最短距離になります。
国立は「共通テスト逃げ切り型」が正攻法になる理由
国立獣医学科の多くは、共通テストの配点比率が極めて高く設定されています。
二次試験での逆転が難しいため、「共通テストでの高得点逃げ切り」が最も確実な正攻法となります。
なぜ、これほどまでに共通テストが重視されるのか。 そこには、獣医学科特有の事情があります。
実は、「共通テストの得点率が高い学生ほど、卒業時の獣医師国家試験の合格率も高い」という傾向が各大学の分析で明らかになっているそうなんです。
- 難問を解く「ひらめき」よりも、膨大な基礎知識を正確に積み上げる「持続力」
- 特定科目の突出した才能よりも、全科目を大崩れさせない「安定感」
大学側は、入試を通じて「6年間のハードな勉強と、その先の国家試験に耐えうる資質」を測っているのです。獣医受験は、一発逆転を狙うギャンブルではなく、ミスを最小限に抑える「総合戦」だと心得ましょう。
苦手科目がある人ほど、リサーチで合否が決まる
「苦手科目があるから、獣医学科は無理だ」と諦めるのは早計です。 獣医受験において、リサーチ力は学力と同じくらい強力な武器になります。
なぜなら、大学によって「配点の傾斜」が全く異なるからです。
- 苦手科目の配点が極端に低い
- 得意科目の点数が2倍に換算される
こうした「配点の設計」を知っていれば、苦手科目を致命傷にせず、得意科目で十分にカバーすることが可能です。
一番の失敗は、全国17校をすべて同じ基準で見てしまうこと。 努力を始める前に、まずは徹底した「情報整理」を行ってください。どの大学が自分にとって「有利な土俵」なのかを見極めるリサーチ力こそが、逆転合格を分ける鍵となります。
獣医学科受験で求められる力とは?

獣医学科の入試で必要なのは、難問を瞬時に解く特別な才能ではありません。
本当に大切なのは、自分のペースを守りながら最後まで走り抜く力です。
天才肌より「崩れない受験生」が受かる
獣医受験に、ひらめき型の天才は要りません。 求められているのは「基礎問題を確実に正解する」という執念です。
10倍を超える倍率の中では、たった1点で順位が数十位変わることも珍しくありません。難問を解く力より、ケアレスミスをゼロに近づける精度。
こうした「地味だけど着実な力」を持つ人が、最後に合格を手にします。
長期戦に耐える「学習設計」があるか
獣医受験は勢いやモチベーションだけでは乗り切れません。
共通テストの広範な出題範囲に加え、大学ごとに異なる二次試験。この両立には気合ではなく、計画が必要です。
もし「今日は何から手をつけよう」と迷う時間が多いなら、それはすでに戦略で負けている証拠です。
淡々と決めた勉強をこなす。感情に振り回されず、一定のリズムで進む安定感。それこそが長期戦を制する最大の武器です。
情報整理力が合否を左右する
学力は十分あるのに結果が出ない受験生がいます。 その多くは、情報を整理しきれないまま勉強を進めているケースです。
「どの科目を、いつまでに、どこまで仕上げるか」 この全体像を把握し状況に応じて修正していく力は、獣医学科受験に欠かせません。
獣医受験は、試験会場で勝負が始まるのではありません。 その前に「勝てる準備ができているか」でほぼ決まっているのです。
最短ルートで合格圏に入るための3ステップ

ここまでで、獣医学科受験が「気合」や「根性」ではなく、構造理解と設計力で決まることは伝わったと思います。では実際に「獣医学科を目指す」と決めた人は、何から考えて、どう動き出せばいいのでしょうか。
ここでは、これから本格的に受験勉強を始める人が遠回りせず最短で合格圏に入るための思考ステップを整理します。
偏差値表を閉じて、「配点表」を並べよう
多くの受験生がやってしまう失敗があります。 それは、偏差値だけで志望校を考え始めることです。獣医学科受験では「偏差値が近い大学=同じ戦い方ができる大学」ではありません。
なぜなら、大学ごとに「共通テストと個別試験の比重」「科目ごとの配点」「得点調整の有無」が大きく異なるからです。
同じ偏差値帯に見える大学でも、ある大学では英語が合否を分け、別の大学では理科1科目が命取りになる。そんなことが普通に起こります。
だから最初にやるべきは、偏差値表を眺めることではありません。各大学の「配点表」と「科目構成」を横に並べて比較すること。これが獣医学科受験のスタートラインです。
志望校は「合格したい順」で決める。憧れ順ではない
次に重要なのが志望校の決め方です。獣医学科受験では「この大学が一番好きだから第一志望」という決め方が、そのまま合格戦略になるとは限りません。
なぜなら受験校の組み合わせ次第で、
- 勉強すべき科目
- 時間配分
- 共通テストへの注力度 が大きく変わってしまうからです。
大切なのは「どこだったら受かりやすいか」を基準に順番を決めること。憧れの大学を持つのは悪いことではありません。 ただしそれは、戦略が固まった後に位置づけるべきものです。
まずは「自分の得意・不得意」「今の学力」「配点との相性」を冷静に見て、現実的に勝ちに行ける大学を軸に設計する。これが獣医学科受験ではとても重要です。
志望校決定は「11月」では遅すぎる
最後に、時期の話をします。獣医学科受験では「志望校をいつ決めるか」が合否に直結すると言っても過言ではありません。
結論から言うと、志望校を11月に決めるのは遅すぎます。
なぜならその時点では
- 共通テスト対策
- 個別試験対策
- 科目の取捨選択 すべてが中途半端になりやすいからです。
獣医学科受験は「最後に追い込めばなんとかなる」試験ではありません。 むしろ、早い段階である程度志望校を固定し、そこから逆算して淡々と積み上げていく受験です。
理想を言えば、高2〜高3の早い段階で「勝ち筋のある志望校セット」を作れている状態。 そこから先は、迷わず、ブレず、同じ方向に努力を積み重ねるだけにしたいところです。
獣医学科受験は「知った順番」で差がつく
獣医学科受験は、特別な才能が必要な世界ではありません。 ただし、何も知らずに一般的な理系受験の感覚で進むと、努力が空回りします。
全国17校という限られた選択肢。 大学ごとに異なる配点と科目構成。 共通テストの比重、二次試験の特徴、6年間を見据えた選抜。
これらを「勉強を始める前」に知っているかどうかで、受験の難易度は大きく変わります。
大切なのは、いきなり走り出すことではありません。 まず全体像を把握し、自分がどの土俵で戦うのかを理解する。 そのうえで初めて、科目対策や勉強法が意味を持ちます。
次にやるべきは、自分の学力と得意不得意を踏まえて「どの大学を、どう狙うか」を具体化することです。
獣医学科受験は、早く知った人から有利になります。 焦らず、しかし順番だけは間違えずに、次の一歩を踏み出してください。

