難関を突破して、合格通知が手元に届いた今。ひと息ついている一方で、「獣医学部って実際どれくらい忙しいの?」「入学前に何か準備しなきゃいけないの?」と、もう次の不安が来ている人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、獣医学部は全体像を知って入学した人と知らずに入学した人で1年後の景色がまったく変わる学部です。筆者自身、卒業後に「これを先に知っていれば」と感じることが山ほどありました。
この記事では、6年間の学年別スケジュールと忙しさの実態から、なんとなく過ごすと損をする1〜2年生の過ごし方、CBT・国試・研究室選びといった避けられない山場まで、現役獣医師の視点でまるごと解説します。合格した今のタイミングで、ぜひ参考にしてください。
獣医学部の6年間はどう進む?まず全体像を知ろう

まずは6年間の流れを一枚で把握しましょう。獣医学部は「1年生で習ったことが6年生の国家試験に直結する」カリキュラムです。今自分がどこにいて、次にどんな壁が来るのかを知っているだけで、日々の講義への向き合い方が変わります。
獣医学部は6年制で、前半(1〜4年)で座学中心の基礎・専門科目を学び、後半(5〜6年)で臨床実習と国家試験準備に移行します。
獣医学部は本当に忙しい?

「獣医学部は忙しい」とよく言われます。でも実際どれくらい忙しいのか、入学前にはなかなかイメージできないと思います。数字と具体的な事実で解説します。
授業数と実習の多さ
1〜3年は週5日、1限から4〜5限まで授業が入ることが珍しくありません。
解剖実習・組織学実習・生理学実習など、座学と実習が並走します。
他学部の友人と話すと「授業少なくていいな」と思う場面が出てくるかもしれません。獣医学部は「出席して話を聞けば単位が来る」という感覚は通用しません。予習・出席・復習のサイクルを回すことが前提の学部です。
再試験・留年のリアルと年間スケジュール
前期(4月〜8月)は講義と実習が中心で、夏休みは比較的長めです。ただし定期試験で一定点数を下回ると再試験が課され、それでも合格できなければその科目を翌年以降に再履修することになります。「1科目落としたら留年」という大学もあります。再試験になってしまうと、せっかくの夏休みや春休みが勉強で削られます。
後期(10月〜2月)は専門科目が増え、1月末からは試験ラッシュが始まります。「なんとかなる」という甘えが通じないのが獣医学部の現実で、留年率は他学部と比べても高く、毎年一定数の学生が進級できません。
おろそかな科目を作るとピンチに
最も大きな違いは「序盤に学ぶ解剖学・生理学・病理学などが、あらゆる学問の基盤になる」ことです。これらを曖昧なまま進級すると、3年以降の専門科目で理解が追いつかなくなります。
科目ごとに完結しないため、途中でつまずいた科目を放置すると後になって必ず響きます。これが獣医学部の難しさの本質です。
では実際に、学年ごとに何が起きるのかを見ていきましょう。
1〜2年生|基礎獣医学を学ぶ「土台」の時期

1〜2年は比較的余裕のある時期です。ただしこの余裕を何に使うかで、3年以降の理解度がまったく変わります。
主な授業(解剖・生理・組織・生化学)
1〜2年では解剖学・生理学・組織学・生化学などが中心(専門科目は1年後期からが多い)になります。教養科目(英語・数学・物理・化学)も並走し、「大学っぽい授業」が始まる一方で、実際の現場のイメージはなかなか掴みにくい時期です。
この時期で重要な4科目
1−2年生で習い始める科目としては、獣医学の全科目の土台になる4科目があります。
- 解剖学:動物の体の構造。これなしに動物の体は語れない
- 生理学:体がどう機能するか。正常な反応を知ることで病気の理解に直結する
- 病理学:病気がなぜ起きるか。3年から本格化するが、理解の土台は2年生で作る
- 薬理学:薬がどう効くか。国試・就職後もかなり重要。
「余裕があるから後でいい」は最もよくある失敗パターンです。病理学・薬理学は3年以降に本格化しますが、解剖・生理の理解が土台になるため、1〜2年で基礎を固めておくかどうかが3年以降の理解度に直結します。
この時期に多い失敗
1〜2年生に最も多い失敗は、余裕があるからと流してしまうことです。
定期試験をその場しのぎで乗り越えて内容を定着させない、解剖実習に出ているだけで「わかった」と思ってしまう、サークルやバイトに時間を使いすぎて勉強習慣が作れない。こういったパターンは1年生のうちは問題が表面化しません。3年以降に「あの頃やっておけばよかった」という後悔として現れます。
3〜4年生|国試科目が揃い、最初の山場が来る

3〜4年生は、獣医学部で最初の「本番」が来る時期です。特に4年生後半になると国家試験の主要科目が一気に揃い、研究室配属・CBT・OSCEが重なります。1〜2年で学習の土台を作っておかないと、ここで一気につらくなります。
増えてくる専門科目(病理・薬理・微生物など)
3〜4年では病理学・薬理学・微生物学・寄生虫学・公衆衛生学など、国家試験の主要科目が一気に加わります。
1〜2年の基礎科目の理解が土台になるため、ここで「あの時ちゃんとやっておけばよかった…」と後悔する学生が毎年出ます。
CBT・OSCEとは何か
臨床実習に進むための関門となる試験です。多くの新入生が「聞いたことはあるけどよくわからない」と言います。落ちると5年以降の臨床実習に進めません。
CBTは1〜3年で習った内容が範囲の中心で、筆記形式で知識を問われます。
OSCEは保定・身体検査・問診などの手技を実際に行い評価される実技試験で、「知っている」ではなく「できる」かどうかが問われます。実施時期は大学によって異なりますが、4年後半〜5年前半が多いです。
CBT・OSCEの対策の始めどきと具体的な勉強法は、別の記事で詳しく解説します。
研究室配属(決め方とタイミング)
多くの大学で4年頃に研究室に配属されます。研究室によって忙しさ・卒論の負荷・就活のしやすさがまったく変わります。
「どこでもいい」「先生が優しそう」といった基準で選ぶと、4〜6年が想定外のしんどさになることがあります。選び方の基準と失敗パターンは、別の記事で解説していきます。
5年生|臨床実習・卒業研究 獣医師としての感覚を掴む

5年生になると、いよいよ臨床実習が始まります。座学で学んできたことが、初めてリアルな症例と結びつく時期です。「一番楽しかった」という声が最も多い学年である一方、体力・精神ともに最もきつい時期でもあります。
大学附属病院での臨床実習
大学の附属動物病院で、実際の症例を通じて学びます。小動物の内科・外科・画像診断・麻酔科に加え、大学によっては産業動物(牛・馬・豚など)の臨床実習も行います。
1〜4年の知識がここで初めて「使える知識」になる実感が得られます。
外部実習の重要性
大学附属病院の実習に加え、民間の動物病院・公務員機関など外部での実習も行います。
ここで進路の解像度が一気に上がる人が多く、「こんな道があるとは知らなかった」という気づきもこの時期に起きます。
実習生活のリアル
朝から病院に入り、夜まで続く日もあります。産業動物の実習では早朝から農場に向かうこともあり、体力的な消耗は小動物とはまた別のしんどさがあります。
きつい時期ですが「同期との結束が最も強まる時期」とも言われます。
6年生|国家試験と進路決定

6年生は、いよいよ獣医師免許取得と就職という2つのゴールへ向かっていきます!
獣医師国家試験の概要と合格率
毎年2月に実施され、合格率は例年80〜90%台です。出題範囲は1〜6年で学んだ全科目にわたります。
国家試験の勉強スケジュール
6年生から始めても間に合う人は多いですが、それは1〜5年で積み上げてきた人の話です。基礎が曖昧なまま来てしまった場合は時間が足りなくなることがあります。早いうちから少しずつ意識しておくことが大切です。
具体的なスケジュールは会員記事で解説予定です。
主な進路(臨床・公務員・企業・大学院)
獣医師の進路は動物病院だけではありません。企業(製薬・食品・飼料など)、公務員(家畜保健衛生所・検疫所など)、大学院・研究機関といった選択肢もあります。
どの進路を目指すかによって、5年生の外部実習先や就活の動き方が変わります。
獣医学生の「生活面」は?

6年間の学習内容を把握したうえで、生活面のリアルも知っておきましょう。「勉強だけ」では語れない獣医学部の実態です。
バイトはできる?
低学年(1〜3年)はバイトと両立している学生も多いですが、授業・実習の多さを甘く見ると両立が崩れます。週2〜3日・短時間に抑えるのが現実的です。
高学年(4〜6年)になると研究室・実習・国試準備が加わり、バイトを減らす・辞める学生が増えます。研究室によっては5年生以降ほぼバイトなしになる学生もいます。
一人暮らしvs自宅通い
一人暮らしは自由が確保しやすい反面、家事・食事・体調管理をすべて自分でこなす必要があります。特に5年以降は食事と睡眠の質がパフォーマンスに直結します。自宅通いは家事負担が少ない分、通学時間がかかるケースも。
どちらにしても「時間を意識して使う習慣」が6年間を通じて重要です。
サークル・部活動
獣医学部はクラス制の大学が多く、同期との結束が強くなりやすい環境です。サークル・部活は他学年・他学部とのつながりが生まれる一方、高学年になるにつれてかけられる時間は減ります。
続けることを目的にするより、自分にとって必要かどうかで判断するのが現実的です。
合格した今だから間に合う。1年生のうちにやるべきこと

6年間の土台は、実は1年生で決まります。ここでは「知っていた人だけが得をした」具体的なアクションを公開します。
解剖学はすべての獣医学の基礎
1年生の初めで学習する「解剖学」の理解なしに、臨床も病理も外科も成立しません。
6年間を通じて最も長く使う知識です。
最もはじめに習う学問のため、しっかりと頭に入れましょう。また解剖学は暗記の側面が強く、嫌になってしまうことも多いです。ただ見方を変えると、解剖学は「自分なりの勉強スタイルを作る練習台」でもあります。暗記の量が多い分、試行錯誤する余地があります。
ここで自分に合った勉強の型を作れると、その後の科目がぐっと楽になります。
定期試験をその場しのぎで乗り越えると危険!
1年生の定期試験は高校の延長のような科目も多く、専門科目も暗記の側面が強いです。そのため直前に詰め込み勉強すれば乗り越えられることもあります。問題はその後です。
試験が終わった瞬間に内容を忘れる勉強をしていると、3年以降に積み上げができません。解剖学の試験が終わっても、その知識は生理学・病理学・外科学すべてで使います。「試験のための勉強」と「積み上げるための勉強」は別物です。1年生のうちにこの違いを意識できるかどうかが、6年間を通じた差になります。
1年生のうちに一度は行くべき「学外」の場所
動物病院・農場・食肉処理場など、獣医師が実際に働く現場を1年生のうちに一度でも見ておくことを勧めます。
理由はシンプルで、「自分が目指す場所」のイメージがあるかどうかで、日々の勉強のモチベーションが変わるからです。見学のハードルは思っているより低く、動物病院であれば見学を受け入れているところも多いです。
進路を決める必要はありません。「どんな世界があるか」を知っておくだけで十分です。
やってはいけない1年生の過ごし方|挽回不可能なミスを避ける
毎年同じパターンで後悔する学生がいます。
一つ目は「サークル・バイト全振り」です。1年生は時間があるため、気づいたら勉強以外で時間が埋まっていたというパターンです。楽しむことは大切ですが、勉強習慣が完全に抜け落ちると2年生以降の立て直しが難しくなります。
二つ目は「なんとなく進級」です。試験をギリギリで乗り越え続けた結果、3年生や4年生で一気に理解が追いつかなくなるパターンです。1年生のうちは表面化しないため気づきにくいのが厄介です。
三つ目は「情報を持たないまま過ごす」です。研究室・実習・国試・就活、すべてにおいて「早く知っていた人が有利」という構造があります。MVAでも「知って得する情報」を随時更新しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
獣医学部の6年間、知って入学した人が強い
まずは「こんな流れで6年間が進むんだ」と頭に入れておくだけで十分です。
獣医学部は長いようで、気づいたらあっという間に過ぎていく6年間でもあります。その中で「知っておけばよかった」と後悔しないために、この記事が少しでも役に立てていたら嬉しいです。
入学前の今、まずは肩の力を抜いて。知ったことを少しずつ意識しながら、新しい生活を楽しんでください。応援しています。








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