獣医師を志している人の中には「公務員獣医ってどんな仕事?」「休みをとりやすいって聞いたんだけれど本当?」と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、公務員獣医師として働かれている先生にインタビューを行い詳しい業務内容や1日の流れについて伺いました。(※公務員の先生に対しての報酬等は一切発生しておりません。)
今回お話を伺った先生
小動物志望で入学→大動物を好きになり公務員へ
ーーそれでは今回は公務員の獣医師の先生にお話を聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。それではまず、公務員獣医師と言う仕事についた経緯について教えてください。
はい。まず獣医学部に入ったときには一応小動物志望でした。
けれど大学の授業とかで牛などの大動物に触れ合っていくうちに「大動物に行きたいな」って思うようになったんです。そこで就職先の候補を大動物臨床と公務員に絞りました。
そこからそれぞれインターンに行ったりしたんですけど、『病気を治療する』っていうよりも『病気を防ぐ』ということを考えながら働くのが面白いと思い、公務員を選びました。
ーーありがとうございます。『病気の予防』に興味があり公務員を目指されたということですが、実際になってみてギャップみたいなものってあったりしましたか?
うーん…特にギャップを感じることなく毎日楽しく仕事はできてるのかなと思います。
入る前は「あまり牛の農場とかには行かないのかな」なんて思っていたのですが、実際は結構毎日のように牛の農家さんのとこに行っています(笑)
思いがけず大変だったのは書類関係ですね。けっこう書類を作ることが多いので、言葉遣いであったり表の表の見せ方であったり、そういう綺麗な書類を作るのに最初は苦労しました。
公務員獣医は『家畜を病気から守る』ことが仕事
ーー具体的な仕事内容を教えていただけますか?
はい。まず公務員獣医っていっても色々あるんですけど、私自身は県の獣医師です。
県の獣医師は畜産分野と公衆衛生分野に分かれているのですが、私自身は家畜保健所で働いてるので家畜保健所の仕事を今から説明します。
家畜保健所の仕事は『家畜を病気から守る』ことが目的です。例えば法定伝染病だったり、そういう病気を起こさないために働いています。農家さんが症状を呈している家畜を見つけたら、まず家畜保健所に通報があります。そこから農場に行って採材して検査…という流れですね。
また、大きな病気が発生したときに1番に動くのも家畜保健衛生所です。今「鳥インフルエンザ」や「豚熱」とかよく聞くと思うんですけど。そういった大きな病気が発生したときの殺処分などが代表的ですね。
ーー現在楽しくお仕事ができているとのことですが、特にやりがいを感じることや楽しいことを3つほど教えていただけますでしょうか。
まず1つは、自分の指導の結果を実感できるということですね。自分の仕事は病気が広がっている農家さんのところに指導に入り消毒の指導や餌の改善指導などを行っています。そして、その指導後にちゃんと改善した結果が得られ農家さんが喜んでくださるとやはり1番嬉しいですね。
2つ目は休みがあることですね(笑)公務員なので土日は基本休みで、残業も自分が働いてるところはほとんどないのでプライベートもすごい充実させることができています。
3つ目は、技術や知識のサポートが充実していることですね。例えば繁殖検診なんかは大学時代あんまりやったことがなかったので不安だったんですけどちゃんと練習にも行かせてもらえるし、講習会などもあるので技術面でのサポートはとても充実していると思います。
ーーありがとうございます。反対に今お仕事されていて何か難しいことやきついことがあったら教えてください。
はい。まず仕事に入りたての時は慣れるのが大変でした。特に自分の職場は馬や牛の採血だったりに行くことが多くて、その採血に慣れるまでが大変でしたね。
経験を重ねるうちにだいぶ慣れてくるのでもう今はなんとも無いんですけど、最初のうちはやっぱり大変でしたね…
それと公務員では異動というのがあって人から評価されるので、例えば「自分より後に入った人が自分より上の地位に行く」っていう経験をこれからするのかなと思うとちょっと憂鬱ですね(笑)
自分の希望する配属先に入れる?
ーー公務員の獣医師の配属はどのように決められるんでしょうか。
私の県の場合は、面接の時にどの分野に行きたいか聞かれました。私は一応希望通りの配属になったんですけれど、100%希望したところに行けるわけではないと思います。
ーー同期の方とかで希望していないところに入ったとかそういう方はいらっしゃったりするんですか?
そうですね…「どちらでもいい」っていう人もけっこう多くて、それで今コロナとかで保健所がすごい大変じゃないですか。なのでその時々の状況で配属の傾向というのは変わると思います。
ーーなるほど。
公務員獣医師の1日の流れ 知識はどう身につける?
ーーそれでは、1日の流れについて教えてください。
はいまず8時半出勤なので、10〜20分前に職場に行きます。その後の流れとしてまず多いパターンは、午前中に農場に行って採血や指導、午後帰ってきたら採った血液を使って抗体検査などをして病気の浸潤状況をみることが多いですかね。
診る動物が牛・豚・鶏それぞれいるので、それぞれの家畜にあった業務をしています。
他のパターンだと、繁殖検診っていって牛の妊娠鑑定を午前中にして午後に結果報告を作って返す。他には開業の先生から検査対象の血液や糞便を持ってきてもらって、検査した結果を返したり…様々な検査をしています。
ーー結構知識を持っておくことが大切な気がするのですが、勉強は就職してから身につけるものなのでしょうか。
そうですね…基本的な事は大学までに身に付けておいて欲しいところではあるんですけど、やっぱり実際どういう病気が現場で多いのかとかは大学で勉強していてもあんまりわからないと思うんですよね。なので経験の部分は大きいと思います。
また公務員は研修とかも多いので、そういうところで知識を身に付けて仕事をやってます。
研修では「こういう症状だったらこういう対応をする」というフローチャートをいただけるので、はじめはそういうのを見て試行錯誤しながらやっていくといいと思います。
ーーありがとうございます。では最後に、これから就職をする学生たちに対してメッセージをお願いします。
はい。まず公務員のいいところとして、小動物とか大動物臨床に比べると福利厚生がすごい充実しています。なのでそこが公務員獣医師の魅力の1つなのかなと思います
また家畜保健所の仕事にはなるんですけど、動物と触れ合う機会も多く「これはどんな病気だろう」と考えて対処していくこともできるので、つまらないとかいうイメージを持っている人の期待をいい意味で裏切るすごい楽しい仕事だと思います。
まあ獣医っていう職業は転職しやすい職業なので、ひとまずは興味のあることをすればいいのかなと思います。
ーーそれでは今日のインタビューはこれで終わりにしたいと思います。お忙しい中ありがとうございました!
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