海外の獣医師ってどんな感じ？カンボジア滞在中の世界一周獣医師に聞いてみた！

「将来海外で働きたい」「海外の獣医師資格取得を目指している」

そう思った事がある人は多いはず。でも実際に調べてみても、情報は少ないし信ぴょう性も確かでないかもしれない。どうすればいいかわかりませんよね。

今回は世界一周をしていて現在カンボジアにいる獣医師の「のすけ先生」にインタビューした後編です！アジアの実際の獣医療は一体どのようになっているのでしょうか？

今回お話を伺った先生

魅力的なカンボジアの職場環境

ーー今回は世界を旅しながら海外の獣医療の情報を発信しているのすけ先生にお話を聞きました。海外の獣医療はやっぱり日本とは結構違いますか？

カンボジアにはめっちゃ感動しましたね。

カンボジアの動画とかこれから上げていこうと思っているんですけど、カンボジアの動物病院のすごいところって、まず「18時に絶対退勤でその夜間当番とかない」んですよ。

入院している子を誰かが付きっきりで見るっていうこともないし、9時から18時まで。
院長もスタッフも全員平等でそこで終わり。

あとは週休完全2日と1か月のバカンスが全員にあるんです。ほとんど現地のカンボジア人なんですけど、何人かの日本人のスタッフさんがいて、そこで一か月日本に帰る人もいます。それで給料は日本と同じ位ですから、カンボジアの物価で日本と同じ給料が出るとカンボジアではリッチな生活ができるんですよね。

日本とは違った獣医療の認識

ーーカンボジアでは日本の獣医資格を持っていれば働けるのですか？

カンボジアって大学が四年制だから国家試験がない、国家資格もないんですよ。ぶっちゃけて言うと日本人が行って何したっていいていうか、別に現地の国家資格とる必要もないんです。行って普通に開業もできます。

だから僕が訪問している獣医さんもそんな感じで行って、現地の子たち、在学中の子や卒業した子に動物病院で獣医療を教えているんです。その子たちがそれぞれ自分たちの病院を最終的に持てる様に教育して、日本の獣医療を身に着けて開業していけばその技術が受け継がれていくじゃないですか。

それがカンボジアで受け継がれていけば、カンボジアの獣医療も発展する。とても感動しました。

ーーそれはすごいですね…日本だと遅くまで開いている病院も多いと思うのですが、カンボジアではどこでも18時ごろまでなのでしょうか？

そうですね。日本だったら22時23時とか深夜までというのが文化として出来上がっちゃっているから変えようがないじゃないですか。
例えば「うちはもう18時で完全に閉めますよ」みたいな動物病院が新しく出来ても、みんなそこには行かないですよね。

けれどカンボジアはまだみんなやっと動物を家族として飼い始めて、病気になったら動物病院に連れて行くっていう文化がやっと最近できてきてて。

だから動物病院としては、「うちも人間だからこの時間までで終わり、その時間に来れなかったらもう諦めて」っていう、飼い主さんに分かってもらうっていうスタイル。日本みたいにサービスの塊じゃなくて、カンボジアは「こういうスタイルだから理解してね」って感じなんですね。

それがいいか悪いかペットの為かは抜きにして、獣医師としてはめちゃめちゃホワイト。だからほんとにみんな生き生きとしています。
プールやジム付きのちゃんとした家で暮らせる、別にそのカンボジアの部落とか村とかで地べたに寝るとかそういうイメージじゃなくてきれいな家に住んで、本当にいい生活、リッチな生活が出来るんです。

海外の獣医の実際の生活

ーーコミュニケーションは全部英語なのでしょうか？

全部英語です。患者さんへの説明もスタッフ間のコミュニケーションも全部英語だから、英語も身につきますね。まあそれを魅力に感じるかどうかは人にもよると思いますが。

だから「カンボジアで働く」っていうそのハードルを超えさえすれば多分他の条件は日本よりいい気がします。
「まだ出来上がってないからどうとでもできる」っていうのがカンボジアのスタイルですね。

医療機器については、日本みたいに最高水準のものばっかりそろっている訳ではないですけど、中国とかの最低限機能は備わっていて診療には差し支えないような機器は揃っているので、いい感じで働けていますね。野外診療、聴診器一本だけみたいな感じではないです。

ーーありがとうございます。1日の流れについてお聞きしてもいいですか？

まあそうですね、僕の旅のテーマが獣医ももちろんなんですけど、「世界中のジムで筋トレしたい」っていう夢もあって。

いろんなジムにいったりだとか、あとはブログ書いたりwebかいたりとかたまにYouTubeやったりとかオンラインで仕事して、現地で出会った人と交流したりとか、たまに動物病院でバイトさせてもらったりとか、本当に毎日夏休みみたいな感じなんで多分参考にはならないかもしれない（笑）

海外の免許は必要？

ーー今カンボジアは免許がいらないとのことですが、他の国で、例えばタイとかで働きたいと思った時に免許はどういう使われ方をするんですか？

なんというかグレーゾーンみたいで。タイでは数年前に国家試験が始まったらしいですけどかなりモグりがいて。僕がインタビューした人たちはプリテンド、「ふりをする」という単語をよくつかっていましたね。多分タイで獣医やる分にもタイの資格をとる必要はない。アメリカとかヨーロッパとかオーストラリアだったら資格とり直さないといけないけど、東南アジアだったら求められることがないからいらないと思います。

「まだ整っていない」っていう言い方が一番しっくりくると思うんですけど、まだ整っていないからどうとでもなるって感じ。

だから、僕がタイでインタビューした人も政府の機関で働きつつも休みの日は手術のアルバイトとかしていて、お給料も直接現金の受け渡しなんですよ。日本だったらあり得ない。公務員が副業するうえに直接お金の受け渡しもしているから、日本ではクビになっちゃいますよね。でもタイではそれは普通にOKです。まあタイ、カンボジアあたりだったらいらないです。

こんな風に何か資格とか取る必要はないから、日本人にとっては結構チャンスじゃないかなあと思いました。現地に住んでる日本人結構多くて、病院に来る人のの3，4割ぐらい。「日本の先生にみて貰いたい」って人も結構いるんですよ。言い方悪いかもしれないけど、チャンスなんだろうなと思って見てました。

ーー例えばアメリカだったりとかそういうきちんと制度が敷かれているとこに行きたいと思ったときは情報はどうやって集めるんですか？

調べたことがあるんですが、日本獣医師会のホームページで直接質問した人が昔いて、その人には「よく分かりません」みたいな回答が返って来ていたんですよ。結局、「その国に行って見ないとわかんない」部分が多いと思うんです。アメリカは確かかなり時間かかるはず。大学をたしか４年で卒業して、そのあと更に４年間専門課程とかがある。大学の勉強自体はもしかしたら飛び級とか出来るかもしれないけど。

海外で獣医師として働くっていう選択肢をとるときは便利なサイトがあるわけじゃないから、多分自分で直接連絡するしかないと思う。それこそ身近なタイとかカンボジアでさえ誰も知らないし、現地の人でさえよくわかっていないから。その現地の人でさえ、「免許っているの？」「うーん微妙。」みたいな感じでしたね。

世界一周にかかるお金はどれくらい？

ーー暮らしをするのには割とまとまったお金が必要ですよね、生々しい話なんですが、どのくらいのお金でスタートされたんですか？

一度就職している時に、世界一周に興味があったから調べてみました。すると、普通に生活したら大体1年間で200万位かかると。二年間最高でやろうかなって思ってたから、400万。

大動物獣医っていうのもあって、お金はたまりやすかったですね。その時家賃が12,000円円で、手取りが32万くらいだったんで、本当に月の給料の6割7割が溜まってました。だから月に15万から20万位溜まってって、まあ2年間で600万位溜まりました。大動物の魅力はそこかもしれないですね。お金が稼げるっていうのが一個の大きな魅力かもしれない。

今はそれ使って旅しながらあとはちょこちょこバイトさせてもらいながらという感じで旅していますね。ぶっちゃけそんなにお金に関しては戻ってまた働けばいいやって感じなんで、まあそれこそもし院長先生が快くOKしてくれるならカンボジアの動物病院で働くっていう手段もちょうどいいかなとかも思い始めています。

のすけ先生から見た日本の獣医療

ーーそのように海外の獣医療を経験したうえで、日本の獣医療に対して何か思うことはありますか？

やっぱり日本の小動物獣医って、「労働環境」が最大のハードルだと思うんですよ。個人的には。それを皆多分犬猫が好きだって理由で抑え込んで何とかその過酷な労働環境に耐えてるっていう風に僕には見えていて。

僕は今獣医師３年目なんですけど、同期の中でも結構な人がやめてるんですよ。三、四人に一人はやめてるかな、やめて病院替えたりしてる人もいて、やっぱりそれが現実なんですよね。

やっぱり好きでもやっぱり過酷すぎるとどうしてもストレスになっちゃうなぁと思います。
だからこうやってカンボジアの獣医の世界を知れたのって僕にとっては結構大きいんですよね。

先生のこれからの展望

ーーありがとうございます。それでは最後の質問なんですが、今後どんな獣医になりたいですか？

僕の場合はめちゃめちゃ勉強熱心ってわけでもないし、手先が器用なわけでもないから、ものすごい勉強して資格とってとか実験や論文書いてとかそっちでは自分の強みは生かせない。だから、あんまりためらわない性格、世界一周するとか海外で働くっていうのにもあまり抵抗がないという自分の強みを生かしていきたいですね。

それこそカンボジアで獣医として働くとかも考えていますし。根底には多分人とは違うことをしてみたいっていうのもあるので、色々面白いことをしている獣医さんになりたいなって感じです。

また、自分の発信で、今まで知りたかったけど知らなかったサポートや新しい考えとか役に立つ情報を示して、それが誰かの救いになればいいなと思います。いろんな人のところに突撃したりいろんなところで経験したりしたことを皆に教えて、選択肢を広げられるような獣医さんになれたらいいなと思いますね。

ーー素敵ですね。質問は以上です。ありがとうございました。

ーー今回は獣医師で世界一周をされているのすけ先生にお話をお伺いしました。お忙しい中ありがとうございました！